エゾウコギとスポーツ科学

エゾウコギとスポーツ科学

 

             北星女子短期大学 佐々木 敏 教授

 

 

動物実験では効果がある。 でも、人間ではどうなんだろう?

 

私とエゾウコギとの出会いは、当時、北海道医療大学教授で現在札幌医科大学の武田秀勝教授の研究を通じてのものでした。

 

先生のグループは、精力的にエゾウコギとパフォーマンスとの関係を動物実験で実証的に研究されていました。

 

 

私自身は運動の力学的な分析を通じて競技選手と接していましたので、直接研究に携わることはありませんでした。

 

しかし、武田先生の動物による研究成果は大きな反響を呼び、競技者や指導者が注目し始めました。

 

 

ちょうどその頃、武田先生から「人のパフォーマンスとエゾウコギの効果」を、特に脳内モルヒネとして知られるβエンドルフィンの分泌との関係について研究したいとの連絡をいただきました。

 

パフォーマンスの測定について私が責任を持つこととなり、研究が開始されました。

 

 

ベーターエンドルフィンはペプチドの一種で下垂体から分泌されますが、その作用として最も知られているのが鎮静作用です。

 

強い負荷のかかる持久的な運動は、相当な苦痛をともないます。

 

特に競技で勝利を得ようとすればするほど、大きな刺激と負荷が体にかかります。

 

したがって、競技経験が豊富になればなるほど、体は負荷を緩和するように適応すると予測できます。この緩和作用に中心的な役割を果たす物質がβエンドルフィンです。

 

 

武田先生は動物実験による結果から、持久力の向上のひとつには苦痛の経験があるのではないかと予測され、エゾウコギの成分がパフォーマンスの向上とともにβエンドルフィンの活性を高めたり、分泌量を増加させる効果があるのではないかと考えました。

 

そこで、人間の持久力とエゾウコギとの関係を直接知るために研究を計画したわけです。

 

 

研究はクロスカントリーや複合、およびバイアスロンの選手たちの協力を得て、秋季トレーニングの開始時期から六週間の間に三回の測定を実施しました。

 

測定は漸増負荷テストを行い、呼気ガス測定と血液採取とを行いました。呼気ガスの測定ではパフォーマンスの向上を知ることができますので、血液分析からのβエンドルフィン分泌量との関係を調べることができます。

 

しかし、各測定ごとに最大努力まで負荷をかけて行いましたので、相当厳しい測定でした。

 

 

結論から言いますと、エゾウコギを投与された選手は、そうでない選手よりも統計的な有意差はないものの、エゾウコギの摂取とβエンドルフィン分泌に強い関係があることがわかりました。

 

また、パフォーマンスの向上についても、持久力に大きく影響する傾向が認められました。

 

動物実験の結果や、その後の研究成果を知った日本のスポーツ選手から私たちに多くの問い合わせがありました。どの選手もエゾウコギとパフォーマンスとの関係に注目してのことです。

 

 

これまでにスキー複合の河野孝典選手や阿部雅司選手、スケートの橋本聖子選手らがその効果を高く評価し、コンディション作りに役立てました。また女子トライアスロンの第一人者、村上純子選手も同様にエゾウコギの効果を高く評価しています。

 

金メダルの陰にエゾウコギあり

 

 以上が「エゾウコギとスポーツ科学」と題して佐々木教授が健康をテーマとした機関誌に寄せた一文です。1994年のことで、体力作りのためにはある種の薬効成分を持つ食品の摂取が必要と考えていたスポーツ関係者の注目を集めました。しかも、それがドーピング(禁止薬物)にならず、疲労回復やコンデションの調整、そしてパフォーマンス向上に役立つものとあって、静かなブームを巻き起こしたのでした。

 

 そして、4年後の、日本選手が大活躍した冬の祭典、長野五輪です。感動と興奮を呼んだ数々のシーンは記憶に新しいところですが、ここでも陰で、エゾウコギが活躍しました。

 

 この大会出場組の中では先の河野、阿部両選手に加え、スキー複合の森敏選手、富井彦選手、スピードスケートの黒岩敏幸選手、そして金メダルに輝いたスキージャンプ陣の原田雅彦、岡部孝信、斎藤浩弥の各選手たちが疲労回復、体力の維持、コンディション作りにエゾウコギを最大限に活用したのでした。