エゾウコギのチカラ

エゾウコギと糖尿病

エゾウコギと糖尿病
−− リグナン配糖体からの
    腸内細菌代謝成分・植物性エストロゲンの抗酸化作用とのかかわり

 

               北海道医療大学名誉教授 薬学博士  西部三省

 

 

 

 これまでエゾウコギには抗ストレス作用、免疫力向上作用、抗うつ作用、血圧降下作用、乳がん・更年期障害予防作用など、さまざまな効果があり、これらに関して北海道医療大学薬学部生薬学教室で行った動物実験の結果を述べてきました。

 

 

その他にエゾウコギは以前から糖尿病に効果があるといわれてきました。1989年に旧ソ連でアロキサン誘発の糖尿病マウスを用いたエゾウコギエキスの効果についての動物実験が報告されていますが、その効果に関与する成分と作用機序は未解明のままです。

 

 

 最近、筆者はフィンランド・ヘルシンキ大学のAldercreutz教授らとの共同研究でエゾウコギのリグナン配糖体が腸内で植物性エストロゲンといわれる成分に腸内細菌により代謝されることを見出し(J.Agric.Food Chem.,49,3178−3186<2001>,2003年4月6−9日にドイツでの学会で発表)、さらに植物性エストロゲンが糖尿病に有効という総説論文がアメリカの農業省からだされました(S.J.Bhathenaら、Am.J.Nur.,76,1191−1201(2002)。

 

 

 

 今回は、これらの論文とその中の引用論文をもとにエゾウコギの糖尿病への有効性について考察を述べてみたいと思います。

 

 

 既にエゾウコギに含有されるリグナン配糖体のピノレジノール・ジグルコサイドはラットや人の腸内細菌により簡単に糖がはずれ、生成したピノレジノール(PIN)はラジシレジノール、セコイソラリシジノール、マタイレジノール、エンテロラクトンなど植物性エストロゲンに代謝されることを述べました。

 

 

  さらに筆者らはエゾウコギのリグナン配糖体の主成分であるシリンガレジノール・ジグルコサイド(エレウテロサイドE)から生成するシリンガレジノールも腸内細菌による代謝を受けてエンテロジオールやエンテロラクトンに変わることを見出しました(2003年4月6−9日にドイツでの学会で発表)。

 

 

植物性エストロゲンは乳ガンなどの予防のみならず生活習慣病の予防にも効果のあることから、最近その生理活性が注目されている化合物です。

 

 

 エゾウコギのリグナン配糖体から生成するセコイソラリシジノール、エンテロジオール、エンテロラクトンには高い抗酸化作用のあることがわかってきました。その抗酸化作用はチモサンで活性化した多形核白血球の化学ルミノール蛍光法により調べられました。

 

2.5mg/mlの濃度でセコイソラリシジノールは91.2%、エンテロジオールは94.2%、エンテロラクトンは81.6%の率でそれぞれルミノール蛍光を減少しました。

 

 

 なお、抗酸化作用の高いことで知られているビタミンEは18.7%の減少でした。この測定法はチモサンで活性化した多形核白血球が活性酸素種を発生し、その活性酸素によるルミノール蛍光の強さは発生した活性酸素種の量と比例することを利用したものです。

 

 

したがって蛍光の減少率は測定化合物の抗酸化作用の強さを反映することになる訳です。この結果からエゾウコギ含有リグナン配糖体から腸内細菌の代謝で生成するエストロゲンは高い抗酸化作用をもつことが明らかとなってきました。

 

 

 次に抗酸化作用の高い代謝成分のひとつであるセコイソラリシジノールを用いたカナダのサスカチワン大学でのラットによる動物実験の報告(Prasad K等)を紹介したいと思います。

 

 

  まず、ラットを4つのグループに分け、第1グループは何も投与しない対照群、第2グループはセコイソラリシジノール(22mg/kg)を24日間経口投与した群、第3グループはストレプトゾトシン(80mg/kg)を腹腔内投与した群、第4グループはセコイソラリシジノール(22mg/kg)を3日間経口投与後、ストレプトゾトシンを腹腔内投与し、さらにセコイソラリシジノールを21日間経口投与した群としたものです。

 

 

 糖尿病の発生率は第3グループで100%、第4グループで25%でした。セコイソラリシジノールは糖尿病の発症を75%抑えた結果となりました。第4グループでは血液中の活性酸素の発生も抑えられており、ストレプトゾトシン誘発の糖尿病は酸化ストレスによって起こり、セコイソラリシジノールは糖尿病発症を抑える効果のあることを示したことになります。

 

さらに報告(Prasad K等)ではセコイソラリシジノールが人のT型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)のモデル動物であるBBdpラットおよびU型糖尿病のモデル動物であるZDFラットのいずれに対しても糖尿病の進行を抑える効果のあることを報告しています。T型およびU型糖尿病の進行にも酸化ストレスが関与していることを示唆しています。

 

 

 これまで述べてきた結果を総合すると、エゾウコギの糖尿病への効果には、腸内細菌による代謝でエゾウコギのリグナン配糖体から生成する一連の抗酸化作用の高い植物性エストロゲンが関与しているものと考えられます。

 

 

 現在はまだエゾウコギの糖尿病への効果は動物実験の段階ですが、いずれ人における臨床面からの証明もなされるものと期待しているところです。

 

 

 

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